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蒼穹の昴 

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蒼穹の昴(そうきゅうのすばる)

著者:浅田次郎
価格:各巻620円(税込)
出版社:講談社文庫

久々の書籍。(ここのところ、浦和と仕事でいっぱいいっぱいでした。)
ずっと読みたいと思ってたのですが、タイミングよく職場でこの作品の話になり、文庫を持ってらっしゃる方が持ってきてくださったので、ありがたくお借りしました。

文庫4冊の長編ですが、あっという間でした。崩壊寸前の激動の清朝の物語ですが、知っているようで知らないお隣の国の歴史が身近に感じられ、また、一般に広く知れ渡っている西太后や李鴻章のイメージがガラリと変わります。
中国音の登場人物名に慣れるまでが我慢ですが、頁を繰れば李春雲と梁文秀の運命を見届けずにはいられなくなるでしょう。
 
 
中国の歴史にさほど興味のない方でも楽しめる物語だと思います。
登場人物はもれなく魅力的で、さすがはストーリー・テラーの浅田次郎。
4巻巻末の陳舜臣さんの解説も必読です。

物語は白太太(パイタイタイ)というなんとも不思議な韃靼(タルタル)の占星術師の予言から始まります。後にも先にもこの予言が重要な鍵で、この太太お婆ちゃんがなんとも不思議で不気味な存在。

物語の主人公は、日々を糞拾いでどうにか食いつないでいる極貧の李家の四男坊で素直な心の持ち主である李春雲(リイチュウユン)と、そんな李春雲をかわいがる金持ち梁家の次男坊で心優しき梁文秀(リャンウェンシウ)。この二人の運命が絶妙に交差しつつ物語の世界が広がってゆきます。

春雲が自身にほどこした浄身(宦官になること)も文秀が登第した科挙もなんと惨く苦しいことであるのか、しかもその苦しみの果てが運命のスタート地点なのですから、人生の深さを感じずにはいられません。

また、この物語を彩る重要な人物の一人にイタリア人宣教師のジュゼッペ・カスチリョーネ(郎世寧)が登場するのですが、彼がまた物語の重要なキーパーソン。

物語にはいつの時代も変わることのない、人間が生きていく上でのシンプルで大切な教えがちりばめられています。それにしても、人の生きることのなんと数奇で、過酷で、幸せで、そして難しいことか。
人生の選択には正解も答えもなく、一人一人が己の心と身をもって歩んでいく。それがどんな苦しい時代であろうとも、それを打破するもまた人間の力なんです。

韃靼(タルタル)の占星術師は言います。
「わしは人間の力を信じておる。人間には誰しも、天上の星々をも動かす力が眠っておるのだと信じておる。」
この太太お婆ちゃんの言葉は、後になって重く読者の心に響きます。

あまり書いてしまうと面白くないので、最後にこの物語で個人的に印象に残った部分を、この長編に興味を持ってもらえたらという希望とともに抜粋します。

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「九十九年後に清国はあるまい。だが、政権はどこかに必ずある。支那という国土と支那人は必ず存在するんだ。そのときイギリスは大変な犠牲を払って香港を返還しなければなるまい。九十九年かかって肥やした香港のすべてを、その都市機能もろともに返さねばならないんだ」
 岡圭之介は頭上にさざめくマロニエの葉叢(はむら)を見上げた。木漏れ日が瞼を刺した。
「つまり、李鴻章が死んでも、条約は生き続けるんだな」
「そうだ。中国は偉大だ。我々が永遠だと信じて疑わぬ九十九年という時間も、プレジデント・リー(李鴻章)にとっては、手帳に書いてある予定なんだ」
----------------------------------------「蒼穹の昴3」227ページより----------


イギリスの香港返還はごくごく最近の話題ですので、記憶に新しい方も多いかと思いますが、およそ百年前にしてこの外交手腕、そして時代をも超えるグローバルな思考能力!
目先の利益に惑わされないまことの審美眼の持ち主である李鴻章。
こういう政治家、いまの日本に最も欲しい人ですよね。

この抜粋の他にも、はっとさせられたり、心が痛かったり、ゆさぶられたりすることがたくさん詰まっており、なおかつ、そう遠くない一昔前のお話ですので、機会があったら是非手にとってみてください。
 
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[2008/10/24 22:51] 書籍 | TB(0) | CM(0)

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