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暁の密使 

暁の密使


暁(あかつき)の密使

著者:北森 鴻
価格:650円(税込)
出版社:小学館文庫

オススメ度 ★★★★☆(星のとおり。明治という時代の違った一面が垣間見られます)


明治時代、日露戦争前に「不惜身命」の言葉を胸に西蔵(チベット)の聖地・拉薩(ラッサ)を目指した能海寛(のうみゆたか)が主人公の壮大な歴史ミステリー。
仏教再興のために命がけで西蔵入りに挑む彼には、彼自身も知ることのない使命が課せられていたというお話。
 
 
 
個人的にはとても興味深く読みました。

まず、主人公の能海寛は東本願寺派の僧侶なのだけれども、なぜ彼が西蔵を命がけで目指したかという歴史背景が面白いので簡単にご紹介。

訪れたことがある方にはおわかりだと思うのだけれども、京都には西本願寺(浄土宗本願寺派)と東本願寺(真言宗大谷派)と2つの本願寺があって、まずはそこから。

遡ること安土桃山時代、時の権力者である織田信長が、自らに刃向う反抗勢力として宗教を弾圧し続け、それに抵抗し続けたのが石山本願寺に立てこもった顕如上人。(『石山の法難』)
しかし、本能寺の変での信長の死後、正親町(おおぎまち)天皇の仲裁を受け入れ豊臣秀吉顕如上人は和解。ただ、顕如上人と長男の教如は意見が食い違って、教如は戦いをやめずに続行。
和解した顕如上人は、豊臣家(の後ろ盾の天皇家)から京都の七条堀川に土地を賜り、そこに建立されたのが西本願寺。結局、西本願寺顕如上人の三男の准如が継承することになるのだけれども、それでは戦いを続けた長男教如はどうなったか。ここで出てくるのが徳川家康。(やっぱりねって感じよね。)
で、兄弟でタッグを組まれても面倒だし、対立していてくれたほうが勢力が分離されていい按排だと考えた徳川家康は、寺地の寄進ということで、長男の教如に七条烏丸に西本願寺とまったく同じ(!)十万坪の土地を与え、そこに建立されたのが東本願寺というわけ。

簡単に言えば、天皇家が後ろ盾の西本願寺×徳川家が後ろ盾の東本願寺という構図。

これをふまえて、この小説の舞台である明治時代に話を戻して、明治維新によって長きにわたった徳川幕府が終焉を向かえるわけですが、これにともない、徳川家が後ろ盾の東本願寺は窮地に立たされることとなってしまうわけです。

明治維新後の「神仏分離令」の発令が、廃仏毀釈([はいぶつきしゃく]:仏教施設の破壊など)運動を民間で引き起こしてしまい、それによって瀕死状態となってしまった仏教を、そして歴史背景的に絶対的に不利な立場の東本願寺を守らんがため、仏教の原典といえる経典を手に入れるために、主人公は当時鎖国下にあった西蔵を目指したわけなのです。

ところが、この激動の時代、西蔵は大陸の要所として諸外国が虎視眈々と狙う地でもあって、主人公はそんな政治的な陰謀に、本人がまったくあずかり知らぬところで巻き込まれていってしまうと、こんな筋立てになってます。
言うならば、ハードボイルド風味の歴史ミステリー。
西蔵を目指すことから、途中、西遊記になぞらえたシーンもあったりして、この装丁や内容説明の印象以上に楽しめました。

主人公の能見がまっすぐな人物であるがゆえに彼に関わってゆく人々もまた魅力的であったり危うかったり。
この時代にこんな人がいたのだと、本書ではじめて知りました。

中国人名と地名が慣れるまで少し難しいですが、面白い話でしたので、興味のある方は是非。
井家上隆幸さんの解説にもありますが、「坂の上の雲」とはまた違った明治の一面を垣間見られるでしょう。


チベット - Wikipedia
ダライ・ラマ法王日本代表部事務所
 
 
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[2010/03/05 23:59] 書籍 | TB(1) | CM(0)

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暁の密使

 明治時代といえば、仏教にとって受難の時代だろう。廃仏毀釈の嵐が吹き荒れ、仏教は存亡の危機に瀕していた。そのような中、仏教最高のために、経典を求めて、チベットを目指した一人の青年僧がいたという。東本願寺を本山とする真宗大谷派の僧侶・能海寛(のうみ ゆた?...
[2010/06/06 12:45] URL 本の宇宙(そら) [風と雲の郷 貴賓館]
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