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神様のカルテ 

神様のカルテ

神様のカルテ

著者:夏川 草介
価格:1,260円(税込)
出版社:小学館

オススメ度 ★★★☆☆(3.6ぐらい サクっと読めて読後爽やか)


読み終わった後の最初の感想は
「なんで、『神様のカルテ』というタイトルなんだろう??」
でした。
話は、しがない地域医療の現場で働く内科医の日常を描いたもので、別に「神様」がどことなく連想させる奇跡とかそういうのはないのよね。神様のカルテというよりは、心のカルテという感じに近い印象。
主人公が夏目漱石に傾倒している内科医であることから、文体は「夜は短し歩けよ乙女(森見 登美彦著)」ちっくで、大正ロマン~昭和初期的なのだけれども、難しいことは何もないし、東京人物もそれなりに個性的で限られた精鋭揃いゆえ、サクサクっと読むことができます。
 
 
 
この物語の主人公は、「24時間365日対応」がうりの信州の本庄病院に勤務する内科医の栗原一止(くりはらかずと)。
物語の舞台は、主人公が勤務する本庄病院と、主人公が暮らす御嶽荘という幽霊屋敷とみまごう共同住居用木造屋敷(今風に言えばシェアハウスってやつ?)と、主人公行きつけの飲み屋である九兵衛の間で繰り広げられます。
(これしかないから絶対に舞台化に向いてる、この話は。)

登場人物は、
一止の妻ハル(榛名)、御嶽荘でともに暮らす男爵と学士殿、本庄病院の上司である大狸先生に古狐先生、同僚の砂山次郎に敏腕美人看護婦の東西直美と新人看護婦の水無陽子、そして末期がん患者の安曇さんに、九兵衛のマスターと、あとは御嶽荘の大家とか、ナゾの美女とかそのぐらい。

物語は主人公の語り口調で終始進み、それゆえに、ひたすら淡々と綴られてゆくのみで、派手なシーンとか末端地域医療の救急にありがちなドラマER的演出もないのだけれど、主人公の視点や患者と向き合う姿勢、不器用な言葉にはっとさせられ、それが染みるんです。患者という立場を経験し、言いようもない不安にさいなまれたことのある方はきっと一止のような医師の存在があってほしいと願うと思います。



「先生には、いろいろ面倒かけて申し訳ありません」
安曇さんは深く深く頭をさげた。そしてそのまま頭を上げもせず、
「あと半年の命だと言われました。治療法はないから、好きなことをしてすごしてくださいと」
語尾がかすかに震えていたのを私は聞き逃さなかった。
安曇さんは今年七十二歳、早くに夫を亡くし、子供も親戚もいない一人暮らし。たった一人の孤独な患者に、いきなり「好きなことをしてすごせ」と言ったのか。
どこのアホウな医者だ!
(中略)
「私、ここに戻ってきたらいけませんか」
私が何か言うより早く、安曇さんはさらに言葉を重ねた。
「また私を診てはいただけませんか、先生」
言葉とともにぽたりと落ちたものは涙であった。
癌だと告げた時も、痛みが出た時も、けして悲しみを表に出さず穏やかだったあの安曇さんが泣いていた。
私は涙に濡れる安曇さんの手をとって、ものも言わずに大きくうなずいた。
励ましや慰めなど陳腐にすぎて言葉にできるはずもない。この涙に釣り合う言葉など、私の持ちうる全ての語彙をもってしてもあり得ようはずがなかった。
しばらくしてようやく口をついて出た言葉は、まことに間の抜けたセリフであった。
「次の外来はいつにしましょうか」
それでも安曇さんは、顔をあげて笑ってくれたのである。

(「神様のカルテ」83-84ページより引用)




涙をボロボロ流すほどの感動はないけれども、いい塩梅でジーンとする1冊です。
筆者さんも現役のお医者さん(地域医療従事)なんだね。
とても小学館らしいところも印象的でした。
我が埼玉県も、住民の人数に対して医療が絶対的に不足している状況なんだよね。
私も月に1度は地域医療のお医者様のお世話になっているけれど、これから医師を目指す若者がこの本を読んで、華やかで最先端の現場だけが医療ではないことが伝わってくれたらいいなぁと、地道な地域医療の中にある素晴らしさを感じて地域医療を目指してくれたらいいなぁと願います。

社会の一般的な会社でも同じなんだよね。
大企業で働く人より、中小の現場で働く人の方がオールラウンダーなの。
人手が少なくて、自分で何から何までやらざるをえない状況だしね。
どっちがいい悪いじゃないけど、どちらともが評価される社会であってほしいとは切に願います。
どちらもともに社会には必要なのだから。

そして若者には、楽ではないけれど地道な仕事から目をそむけないでほしいなー。
むしろ、「若さでこれぐらいやってやる!」ぐらいたくましくあってほしいです。
要領が良くて器用なのも才能かもしれないけど、私、栗原先生みたいな不器用な人も嫌いじゃないですよ。
むしろ応援したくなります。その部分は本だけの話じゃないと個人的には思います。

自分は不器用で要領悪いなーと思っている方、軽く読めるので是非読んでみてください。
不器用で要領が悪いのもそんなに悪くはありません、きっと。
 
 
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[2010/04/15 22:21] 書籍 | TB(0) | CM(0)

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