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オリガ・モリソヴナの反語法 

20061102233148.jpgオリガ・モリソヴナの反語法

著者:米原万里
価格:780円(税込)
出版社:集英社(集英社文庫)

タイトルが難しそうというだけで敬遠していた本なのですが、私は全くもって間違ってました。
とにかく「読んでください!」とお願いするにつきる素晴らしい1冊です。この本のページを月曜日にめくってから今日まで、時折寝食を忘れてページをくくり、今週は慢性的に睡眠不足でした。こういう素晴らしい、でもタイトルやイメージで損をしてしまう本は、地道に口コミで世に広げたいものです。
タイトルの"オリガ・モリソヴナ"なる何やら日本人には発音しにくい名前の人物は、この物語の主人公である弘世志摩(ヒロセシマ)が少女時代の一時を過ごしたプラハのソビエト学校の舞踊の恩師なのですが、なにせ、この恩師ときたら口が悪くて年齢不詳、しかし踊りは抜群の謎多き強烈な人物。
日本に戻り舞踏の道を挫折して通訳となった主人公が、崩壊直後のソ連を再びを訪れ、この謎多きそして強烈に頭に焼き付いて離れない恩師の謎を追っていくところから物語りは展開していきます。

そしてタイトルにある「反語法」ですが、このオリガ・モリソヴナの授業で彼女の口から飛び出す活きのいい反語法が、この物語が語る暗く苦しく惨い大粛清時代のソ連の背景の素晴らしいカンフル剤となっているのですが、本文そのままのほうがわかりやすいかと思いますので、少し抜粋したいと思います。

「あぁ、神様!これぞ神様が与えて下さった天分でなくてなんなんだろう。長生きはしてみるもんだ。こんな才能ははじめてお目にかかるよ!あたしゃ嬉しくて嬉しくて狂い死にしそうだね!」(本文P11)

これは、本をめくって一番最初の冒頭部分でのオリガ・モリソヴナのセリフなのですが、これ、褒めてるんじゃぁないんです(笑)
このセリフの続きは

オリガ・モリソヴナはチャルダシュを弾いていた指先の動きを止めると、両手を頭上に掲げて天を仰いだ。次にその手で頭を抱え、もうこれ以上こらえ切れないといったふうにこれ見よがしに身をよじって立ち上がるのだった。
「そこの驚くべき天才少年のことだよ!まだその信じ難い才能にお気づきでないご様子だね。何をボーッと突っ立ってるんだい!えっ!?」
 吼えるように濁声を張り上げながらグランドピアノを離れ、ツカツカと講堂の舞台を横切って踊りの輪の中に割り込んでくる。文法の授業で反語法のことを習うよりはるか前から、子供たちはみな、先生が「天才」と言うのは「うすのろ」の意味だと知っていた。(本文P11)


とにかく本文冒頭からこのような先制パンチをくらうのですが、この口の悪いオリガ・モリソヴナは生徒たちに大人気。

その他にも、オリガ・モリソヴナの口からは「他人の掌中のちんぽこは太く見える(隣の芝は青く見えるの意)」のような思わずふきださずにはいられない名言が数々飛び出しますが、彼女の言葉は嫌味がなくて痛快極まりないのです。でも、そんな生徒に大人気のオリガ・モリソヴナの反語法の裏には、実は想像を絶するようななんとも暗く悲惨な過去があったのです。

そんなオリガ・モリソヴナの謎を調べていくうちに、思いも寄らぬ事実に次々と直面する主人公なのですが、限られた資料からヒントをみつけては、オリガ・モリソヴナの過酷な運命をたどることになってゆきます。
スターリン時代の粛清がなんと惨いものだったか、私たち日本人が知っていそうで知らない隣国の姿が本当によく描かれています。

ソ連、そしてロシアといえば、私たちにはとかくマイナスなイメージがつきまといがちですが、皮肉なことに、主人公の目にも、そして読者にも社会主義のプラハのソビエト学校ほうが日本の学校よりもよほど自由でのびのびとしていると映るくだりなどもあり、こんなに近い国なのになぜこんなにも知らないのだろうということを思い知らされました。

主人公がオリガ・モリソヴナを追う過程で出てくる旧友やその他の登場人物も非常に魅力的で、プラハでほんの数年を偶然一緒に過ごしただけなのに何十年後も変わらない友情に涙したり、粛清時代のあまりの惨さに胸がしめつけつけられたり、もう先が気になって気になって夜も眠れず、とにかく納得するまで読む→寝不足の繰り返しでした。
著者のオリガ・モリソヴナに対する、そしてロシアに対する深い愛情が感じられます。まさに著者渾身の一冊と感じずにはいられません。

なんの知識がなくても読める本ですので、お手にとる機会があれば是非とっていただいきたと思います。
読んで損はありません。あなたの中にあるソ連やロシアのイメージに何らかの変化をもたらすであろうことはもちろん、今まで考えもしなかったこの私たちの育った日本についてまでも考えさせられることでしょう。
文庫本を読まれる方は巻末の「『反語法』の豊かな世界から」も、是非ご覧下さい。

今年享年56歳で天に召された著者米原万里さんのご冥福を心よりお祈りいたします。
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[2006/11/02 23:04] 書籍 | TB(0) | CM(0)

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