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青春のオフサイド 

Falling into glory青春のオフサイド

著者:ロバート・ウェストール
価格:1,890円(税込)
出版社:徳間書店


原題は「Falling into Glory」というタイトルですが、和書の「青春のオフサイド」というタイトルは実に良いタイトルだと思います。

17歳の高校生男子と32歳の女性教師の恋の物語。
心ときめくような物語ではなく、痛く切ない物語。

17歳の彼は早熟で、32歳の彼女は未熟で――
17歳の彼にとっては早すぎた恋で、32歳の彼女にとっては一足違いにやってきた青春――
まさに一瞬のすれ違いのオフサイド。
 


 
高校生男子のロビーは、戦後、小学生の時に憧れていた女性教師エマに再会。
エマは戦時中に婚約者をなくし、同じ学校の冴えない先生とお付き合いしているという噂の中、様々な偶然が重なって、ロビーとエマのお互いの気持ちが近づいてゆくのですが・・・・・。

基本的に、ロビーはオフェンス(攻撃)のオフサイド、エマはディフェンス(守備)のオフサイドで、エマはそのオフサイドラインで絶えず悩み続け、一方ロビーは「レフェリーだって観客だって、うまくごまかしながらやっていけるよ。」というようなスタンスで物語りは進行していきます。

うわべだけ見るとどこにでもありそうな話なのでありますが、この物語の背景には悲劇的要素が3つ存在します。

1. 戦後という時代背景
2. イギリスの階級制度
3. イギリスの封建的社会

貞淑・身分・体裁。
犯したら二度とまともには生きていけないであろうリスクをどこかで感じつつも、それでも2人は惹かれ合っていくのです。
オフサイドラインを微妙にコントロールしながら。

自分たちのオフサイドラインのごまかしに気づかれないように、防衛線をはる2人。
エマは同僚のフレッドという冴えない教師と、ロビーはジョイスという同じ学校の女子生徒と付き合って社会の目をごまかしますが、ロビーもエマも自分たちが必死に守ってきたオフサイドラインにホイッスルがふかれそうになったのをきっかけに、急速にかつ驚くほど違うベクトルで成長するのです。この本の見所はこの一瞬のうち(ページにすると1~2ページ)に大人になった2人の心理でしょう。

ロビーは
「エマはこちらを酔わせ、狂わせる、暗い色のワインのようだった。だがジョイス(同じ学校の女子学生。ロビーのことが好き)は透明な冷たい水のようだった。ぼくらは水があるから生きていける。」(357ページ)

エマは
「あたし、二番手では我慢できないって、見きわめたの。一番の人を知ってしまった以上は(中略)愛はあたしにはむずかしすぎるんじゃないかと思って。あまりにも・・・・・煩雑で。」(365ページ)

このセリフが2人から出てくることの、なんと痛くて切ないこと。これを搾り出すためだけに2人のオフサイドは現れ、消えたようにも思えます。
彼は器用で、彼女は不器用だった。
これね、男女の立場が逆だったら(男性教師と女子学生の恋だったら)その一筋がどんなに細くても光明があるような気がするところが、女性の私としては非常に悔しいです。でも、エマは凄い。あの未熟で、たえず迷っていて、怖がりなエマが、痛みをこらえて自分で決断し、立つ様には、これからのエマにどうか幸せがあるように願わずにはいられませんでした。

彼と彼女は違うベクトルでこたえを出しますが、それでも、彼にとっても彼女にとってもおそらくこの恋は唯一無二の恋。

そもそも、この2人が惹かれあうようになった偶然のきっかけの1つが、ロビーの祖母とエマの母が仲良しだったことなのですが、ロビーの祖母が
「時間なんて不思議なものね。十年なんて、あたしみたいなお婆さんにゃ、なんでもないけど。十分よりも短い気がするわ。乳母車に乗ってた赤ん坊が、気がつくともう、女の子とデートしてるんだから。」(76-77ページ)
というくだりはロビーのお婆ちゃん名言集の1つです。(この他にも、笑える、泣けるお婆ちゃんの名言の数々は、ひょうひょうとしていつもそのものズバリ、いいところをついてます。)

ほんと、70歳やら80歳になってしまえば、10年なんてなんでもない気がするのですけれど・・・・・・・ねぇ。

この作品は舞台にすると面白いかも。最後のシーンを役者がどれだけ演じきれるかに全てがかかると思いますけれど、舞台化されたら見てみたいな~とは思います。

そういえば、この話の中に「サーモス」の魔法瓶が登場してました。さすが老舗メーカー!
 
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[2008/01/18 23:12] 書籍 | TB(0) | CM(0)

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