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かかし 

the scarecrowsかかし

著者:ロバート・ウェストール
価格:1,680円(税込)
出版社:徳間書店


なんとも背筋のぞっとする話です。
湯本香樹実さんの『夏の庭』の中にも登場するお話。
主人公はもうすぐ14歳を迎える思春期真っ只中のサイモン。
戦争で父親をなくし、若く美しい母親がおデブの画家と再婚したことを受け入れられず、閉鎖的になり、自分の心の中の悪魔は増すばかり。
休暇で母親の再婚相手の家へ行くことを余儀なくされたサイモンが、家からカブ畑を横切って訪れた水車小屋に足を踏み入れたことから、物語は一気に展開してゆきます。
 

 
まず、この話は好き嫌いをたいへん問う作品であり、小学校5年生~中学1年生世代が読むと私が読むのとはまたちょっと違う恐怖があるかもしれません。ですが、この作品は思春期の難しい年頃に読んでほしいなと感じるタイトルです。

ちなみに私はこのタイトルはあまり好みではないです。
けれども、私にはサイモンの気持ちがなぜか痛いほど伝わり(家族をはやくに亡くしているわけでもないのですが)、サイモンがどうしてもうまく立ち回れず、ちょっとした行き違いで家族から孤立してしまうたびに、サイモンになりかわって泣きたくなる思いでした。

自分でもよくわからない自分が自分の中にいて、サイモンは外からも内からも追い詰められてゆくのですが、この追い詰められてゆく様が、この過程がとても怖い。

義父の家を訪れたところで家族となかなかうまくゆかないサイモンは、ふと足を踏み入れた水車小屋に安らぎを見出しますが、そこでサイモンと出会い友達になったネコは、水車小屋の敷居をけっしてまたごうとはせず、抱いて入れようなどとしようものなら暴れだす上、義父いわく「まだ小さかったころ、年上の男の子たちがよく、ひとりずつあの水車小屋まで行って、ドアに触って、駆け戻ってきた。それを話すと母は気も狂わんばかりに怒って、自分の大きな黒い聖書を持ち出してきた。そして、その聖書にかけて、あの水車小屋へは絶対に近づかないと誓わされられたんだ。母があんなに取り乱したところは見たことがない。真っ青になって唇を震わせていたっけな。」(104ページ)という、どう捉えても胡散臭すぎる場所。

しかしながら、そんなことは気にせず、水車小屋に通うサイモン。水車小屋の中にほのかに感じる人の気配さえ、童話「3匹のくま」のように感じては笑っている始末。
ところがある日、その水車小屋に突如3体のかかしがあらわれ、こともあろうか日々じわじわとにじりよってくるかかし・・・・。

かかしが登場してから、かかしが怖いのかサイモンの中の悪魔が怖いのか、もう現実と非現実がごっちゃごちゃになってくるわけですが、サイモンの心の悪魔とかかしのリンクは本当によく書けている!と思いました。
かかしっていうと、オズの魔法使いの「カカシさん」を想像してしまいがちですが、こっちのかかしはとてもじゃないけれど「さん」なんてつけられるようなシロモノじゃありません。例えば、有名どころだと・・・スティーブン・キングの書く話だったらピエロで登場するであろう、不気味かつ暗がりでつい思い出してはぞっとするような存在になっているのです、このタイトルに出てくるかかしは。

でもね、この問題はサイモン自身が乗り越えるしかないんです。周囲ができることは手助けだけ。
それに、こんなサイモンを救うことの手助けができる唯一の人物の登場もあったり。

ただ、家族はもうちょっとサイモンにデリケートでも良かったんじゃないかなーって思います。
サイモンと同じ状況に私が置かれたら、間違いなく休暇をまるまる友人の家で過ごすこと必至です。(おとなげないけれど)
お母さんは少なくとも子供の前では「母親」でいないと。「オンナ」になっちゃぁダメですよ。個人的持論ですが。

これは私がサイモンのお母さんと同年代だから思うことであって、私が思春期にこのタイトルを読んでいたらどう感じたのでしょうね。
 
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[2008/01/21 23:56] 書籍 | TB(0) | CM(0)

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