FC2ブログ













ブラッカムの爆撃機 

ブラッカムの爆撃機
ブラッカムの爆撃機

著者:ロバート・ウェストール
価格:1,680円(税込)
出版社:岩波書店
同時収録:「チャス・マッギルの幽霊」「ぼくをつくったもの」
特別収録:「タイマンスへの旅」宮崎駿 編
特別寄稿:「ロバート・ウェストールの生涯」リンディ・マッキネル





ロバート・ウェストールの作品の中で、一番、読み手のセンスが磨かれる作品だと個人的には感じます。
(うーん、もっといい言葉がありそうなのですが、ちょいと見つからないな・・・)
とにかくですね、「読んでみてください」としか言いようがないのです。いや、つきつめればどんな本だって読んでみてくださいになるのですが、そうじゃなくって。あえて言うなら「ハートで読んでみてください」とか、「肌で読んでみてください」という感じか・・・・なぁ。
 
まず、先に宣言しておきますが、非常にいい本です。イマジネーションを要求されるという点では、難しいというか、疲れるところもあるかもしれない。
でも、それを差し引いたって、いい本です。勢いで読みきれます。

私は個人的には、今まで読んだロバート・ウェストールの作品の中で、「黒猫の帰還」というタイトルが一番好きなのですが、中学生の私に、もしもロバート・ウェストールの作品を読ませたら、おそらくこの「ブラッカムの爆撃機」が一番にくるのではないかなぁと想像します。
もしくは私が男性だったら、きっといい年になっても「ブラッカムの爆撃機」が一番かもしれません。

まずは「ブラッカムの爆撃機」から。
いきなり本文からちょっと引用。作品のごくごく冒頭部分ですので、立ち読み感覚でどうぞ。

あのウィンピー・・・・・本名、ウェリントン爆撃機ってやつは・・・・・鉄でできてんじゃない。布製なんだ。貧弱なアルミ管の骨組みに布が貼ってあるだけだ。ま、テントみたいなもんさ。だから、強くおせば、いや、強くおさなくたって、指で布をつきやぶって、プロペラ後流の中で指をふることだってできる。だから近くで弾が炸裂でもしてみろ、破片が機体を貫通して・・・・・そうそう、まるで、横なぐりのにわか雨状態で・・・・・反対側に抜けていくのが見える。おれは無線士でよかった。でっかい通信機がふたつあって、そのかげに隠れることができる。まあ、隠れる前にやられちまうかもな。
想像してみてくれ。防空壕の中で、今か今かと出番をまっている二トン爆弾の上にすわっているのと同じだぜ。そのうえ、しょっちゅうもれるタンクには、ガソリンが四、五千リットルはいってて、においで鼻がつんつんしてくる。どんなに吸いたくっても絶対禁煙。ついでに、防空壕がなんの前触れもなしに上下する高速エレベーターにでもなったと思ってくれ。だからいつも、まわりじゅうへどのにおいがぷんぷんしてる。高射砲や戦闘機を避けるために激しく上下していないときだって、そんな調子だ。でっかくてきたならしいマスクをつけていなくちゃ、ろくに息もできないし、それにむちゃくちゃ寒いもんだから、鼻風邪でもひいた日には、しょっちゅうマスクをはずして、鼻の下にできたつららをへし折らなくちゃならない。
まさか。映画にでてくるかっこいい飛行士なんかとは、大違いだぜ。
(「プラッカムの爆撃機」23~24ページ)


この一部分。私はウェリントン爆撃機なんて知らないし(というか、ゼロ戦の構造すらも知らないし!)、普通に「旅客機」にしか乗ったことはないけれど、それでも、ウェリントン爆撃機に自分が一緒に乗っている気分にさせられるのですがいかがでしょう?

主人公は引用部分に出てくる無線士の「おれ」ゲイリー。
ゲイリーと一緒にC機に乗組むのは、パイロット養成クラス成績トップのマット、ナビゲータークラス成績トップのキット、これまたクラストップの機首銃座担当のいかれポール&尾部銃座担当のビリー・ザ・キッド。ちなみにゲイリーの成績は無線士の成績の真ん中ぐらい。いずれも一年前は高等部最終学年に在籍。
そして、「親父」ことタブリン生まれのアイルランド人であるタウンゼント大尉。いかれポールに「完全にいかれてるぜ。」と言わせる、ウィンピーに乗るために生まれてきたような中年男。

並無線士のゲイリーがなぜ親父率いるC機に乗員しているのかは、読んでみてのお楽しみ。

親父の名前はタウンゼント、他の乗組員にも「ブラッカム」なんていない。そう、タイトルになっている「ブラッカムの爆撃機」はC機ではなく同じウィンピーでもS機のこと。
S機を率いるコリン・ブラッカムは、C機の連中に言わせると「くそったれのブラッカム」。親父とたいして変わらない年齢でありながら階級は軍曹。自他ともに認める万年軍曹。徹底的に無知で、下品・鈍感・無神経。

そのブラッカムのS機が、尾部銃座の射撃手の胸に穴が開いた死体と、口をきくことすらできず、すっかり別人のように変わり果てたブラッカム軍曹だけを乗せて帰ってくるという「ブラッカムの爆撃機事件」が起こる。
ちなみに、尾部銃座の射撃手の死体のそばには三八口径のリボルバーが転がっていて、一発撃った痕跡があり、機体そものには弾の跡はひとつもない。
行方不明だった機首銃座の射撃手と無線士とナビゲーターと副操縦士は、後にカブ畑で発見。パラシュートを開く時間がないまま、低い位置から飛び降りたらしい。S機は搭載爆弾もなければ、故障もなし、機体にもかすり傷ひとつなく、パラシュートで脱出する必要性なんてどこにもない。そして状況をさぐろうにも、当のブラッカム軍曹に下された診断は「緊張性分裂症」これはどういうことなのか―――――

どういうことなのかは本作品でおたしかめください。

個人的にはナビゲーターのキットが好きです。
もしかしたら、ゲイリーのよき相棒だからかも。ゲイリー気分で読み進めると、キットって本当にいいやつです。たぶん、ゲイリー気分じゃなくてもキットはいいやつですが(笑)

ただビリーが「異常なし・・・・・なにもなし・・・・・なーんにも・・・・・」とひとりごとのようにくりかえしながら、尾部で左右に機銃を動かしてるだけだ。
「われら人間、この世に持ちくるものなど、なーんもなし」キッドが酸素マスクごしに、おれにウィンクした。「墓場に持ち去るものも、なーんにもなし」聖書の言葉だ。(ブラッカムの爆撃機52ページ)




お次は「チャス・マッギルの幽霊」について。
短編な上にネタバレすると面白くないので、ざざっと紹介。

主人公はタイトルにもなっているチャス・マッギル。もうすぐ12歳。
私立学校校長のミス・テンプルが児童をつれて疎開することになり、ミス・テンプルに恩のあるチャスの祖母は、ミス・テンプル不在の間、ミス・テンプルの私立学校だったエルムス屋敷の管理人となるべく、夫、娘、孫のチャスを連れて引越しをすることから物語りは始まります。

エルムス屋敷の4階の右端から4番目のお部屋で暮らすことになったチャスですが、隣の部屋にもどうやら誰かがいる気配。しかしながら、隣に部屋は存在するものの、入り口はどこにもなく、家族に聞いても誰もいないというのはどういうこと??

ちょっとハラハラしちゃいますが、こういうことがあったらステキだなーっていういいお話です。



最後に「ぼくをつくったもの」について。

少年とその祖父の交流を描いた短いお話ですが、おそらくウェストールの自伝だと思います。ロバート・アトキンソン・ウェストールという人の人となりを、ほんのちょびっとだけ垣間見ることができます。

そう、祖父のおかげでこうなってしまった。
それも一発で、一分で。(ブラッカムの爆撃機「ぼくをつくったもの」185ページ)


祖父と少年に訪れた幸せな一分間のお話。



ジブリの宮崎監督の漫画が最初と最後に掲載されいますが、賛否両論あるでしょうけれども、個人的には面白いとは思います。どれも興味深く拝見しました。が、載せるなら、ウィンピー見取り図以外は巻末にまとめてほしかったかなぁ・・・・とは思います。
本作のストーリーの漫画は挿絵を超えてしまって「独立作品」になってしまう感じがします。
それはそれで別物で読めばいいじゃんって言われればそれまでなのですが。
見取り図はとてもわかりやすくて、確かに書いてあるとおり「読書の手引き」だったのですが、漫画は私にとっては読書の妨げでした。わがままな私。

なので、これから読む方には、巻頭の漫画は活字で作品を読んだ後に見ることを、私はおすすめします。
 
スポンサーサイト




[2008/01/29 22:12] 書籍 | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://minorin.blog2.fc2.com/tb.php/840-e1cdb0d7